まだ日本で「二胡」を知る人がほとんどいなかった20世紀の終わりごろ、楽楽二胡の会(らくらくにこのかい)の種は武楽群先生によって市川市南行徳で蒔かれました。
のちに二胡は少しずつ広まり、その音色は日本人を魅了し続け、今やテレビなどから二胡の音のしない日はないほどまでになりました。
「楽」という文字には武楽群先生の名前の「楽」、音楽の「楽」、楽しい「楽」いろいろな意味が込められています。
楽楽二胡の会も練習場所や地域を広げ、現在南行徳の他、江戸川区篠崎、また、新宿区の四谷、曙橋、新宿三丁目付近とゆるやかにその輪をつなげています。
音楽とともに豊かな日常を過ごそうと思い立ったなら、二胡を選んでみてはいかがでしょうか。
楽器なら「音が良い」のは当たり前ですが、二胡には音がよいだけではない、音楽を長く楽しみ続けるためのいろいろな特長があります。
■楽器の価格がリーズナブル
オーケストラに並んでいるようなクラシック楽器の価格は天井知らずのところがあり、アマチュアでも数百万円もする楽器を持っていることもありますが、二胡の場合セミプロ用でも30万円も出せば、概ね十分な音色を得ることができます。
■メンテナンスもリーズナブル
弦が2本しかないので弦交換も安価で済みます。それぞれのパーツも手頃なため、プロにメンテナンスを依頼してもそれほどフトコロが痛みません。
またボディに張ってあるヘビ皮も破けるなどということはまずなく、信頼性のおけるのものを購入しておけば末永く愉しむことができます。
■音が小さいので自宅で練習も可能
楽器にとって日々の練習は大切な要素のひとつですが、木造のアパートや壁の薄い集合住宅でもなければ二胡は自宅で練習することができます。
低音量なので演奏者の耳にも優しく、うるさいということはありません。初心者は最初は小さな音しか出せないし、大きな音が出る頃にはそれなりに上手になっていることでしょう。
■楽器が軽量
また重量や大きさも楽器にとって重要な要素です。二胡はバイオリンやビオラなどといった楽器と同様に軽量なため運搬が大変ラクです。
左足の付け根あたりにポンと置いておくだけなので支えるのに無理な姿勢になる必要もありません。
他の楽器を重量で挫折したことのある方もぜひ挑戦してみてください。
■オタマジャクシじゃない
音楽経験者にとっては逆にちょっとしたハードルではありますが、二胡の楽譜の多くは「数字譜」というドレミを1〜7の数字で表したものとなっています。
■覚えるべき音の数が少ない
弦楽器でありながら一度に発することができる音の数は、稀な例外を除いて同時にはひとつだけ。ヴォーカルや吹奏楽器と同じような感覚で演奏できます。和音がないため覚えなければいけない音の数が少ないのも記憶力の怪しくなってきた大人に優しいでしょう。
■座って弾ける
ソロの演奏も椅子に座ったまま行うのが通常です。足腰に問題がある大人にも優しい楽器です。
■中国には高速曲が多い
誰が呼んだか「癒し系」。中国大陸では二胡に対してそのような認識は全くなく、誰も癒し系楽器などと思っていないそうです。
「高速であればあるほど偉い」曲も存在するのは大陸ならでは。本格的に二胡が弾けるようになりたいと思ったら「爆速」を避けることはできず、ある日ハタと「癒し系」「悠久の音色」といったキャッチコピーに騙されたと気づくわけです。
しかし、ここは日本。いくらなんでも大人の音楽入門者が目にも(耳にも)留まらぬ速さで16分音符を弾きこなそうというのは至難の業です。
楽楽二胡の会では大人の入門者が長く楽しめる体の使い方を習得しつつ、少しずつゆったりと音楽を楽しんでいます。
■テレビと音が違う
オーディオに関心のある人がまず疑問に思うのが、テレビやCDで聴く二胡の音と講師が奏でる二胡の音との違いです。
二胡の本来の音はもっと雑みがあって味わい深いものなのですが、ポップスの録音で電子楽器や電子処理に混ぜようとすると溶け込めず浮いてしまうため、野性的な音成分を削って現代のスタジオ処理で「全く違う」と言っても過言ではない音にします。
実際バイオリンもサキソフォンもあらゆる楽器が本物の演奏と録音とでは音が異なるのですが、二胡の場合は「別物」レベルです。
「いつまでたってもCDのような音が出ないんです」と悩む方も多いようですが、そもそも機械を通さないとあのような音は出ない、とお考えください。
■いつも発展途上
伝統民族楽器なのに金属弦。これだけでも驚きです。日本の三味線や琴が金属弦に取って代わることは今後もまずないと思われますが、伝統の保存より西洋楽器のような楽器としての存在と発展を重視するのでしょう。中国は琵琶も琴も二胡も現在では金属弦となっています。
ワシントン条約で野生のニシキヘビは取引が禁止されているため、二胡では養殖のヘビ皮を使用し、養殖証明書がないと日本にも輸入できません。
近年、このヘビ皮問題をどうにかしようと人工の「皮」を代用し始める動きもあり、またボディの木材も枯渇してきているため、これも新たな素材に生まれ変わる日も遠くないと言われています。
古典楽器の教え方も少し前までは「師匠」が「私の弾く通りに演奏しなさい」と「お稽古」をつけるような、日本の古典楽器やイタリアの古典音楽などと似たような方式だったそうですが、近年、中国や台湾の児童教育〜音楽大学では西洋楽器のメソッドなどが取り入れられ非常に合理的な教育がなされているようです。
日本のレッスンではまだそのようなシステマティックな教育法はあまり広まっていませんが、時間のない成人が手っ取り早く楽器を楽しめるようになりたい場合、合理的なレッスンと練習方法を選ぶのもよいでしょう。